山の挽歌-松田白作品集- › 2010年01月
2010年01月29日
登攀
山へ登るのに理屈はない
ほこりっぽい街や
煙草くさい部屋で
議論するのもまたいいが
この澄み渡った大空に
社会論や原子論を
ぶっつけることはなかろう
わがままな俺には
めっぽう居心地のいいこの山に
そんなものは真平だ
一度落ちれば死んでしまう
この鉄のような岩壁だ
錐のような尖峰だ
黙って突っ立ってるお前等だが
俺の頭ときたらよじ登るという行為で満員だ
いろんなことを
勝手に考えたがるこの俺を
何も忘れて熱中させてくれる
お前は何と素敵な奴だ
考えてみれば馬鹿なことだ
高等動物の俺様が
何でこんな所を命がけで
登らねばならぬのだ
だから利口な奴は登らない
郷愁性
一種の精神異常だな
何とでも言いやがれ
ズンと深い青空だ
黙って突っ立ってるお前等だ
俺はお前が好きなんだ