山の挽歌-松田白作品集- › 詩 › 浅き湖(うみ)
2009年03月12日
浅き湖(うみ)
浅き湖(うみ)は笑みをたたえ
午後の陽に光り輝く
黄ばみたる梢そよぎて
重なりて二つの葉落つ
浅き湖は笑みをたたえ
水底はみどりに透き
胸拡げ白き腕のべ
青き眉ひそむ
汝の心我を招き
我が心汝に憩う
そも汝は何を愁い
そも汝は何に憧る
我汝を愛さんと欲し
いと深き絶望の淵に沈む
ああ深淵ぞ我が愛の住家
浅き湖は笑みをたたえ
我が心知らず
我低回の岸辺にありて
去りもあえず
我が命ただひたすらに
秋の日に病葉と散る
(1946年10月26日、蓼の海(たてのうみ)にて)
Posted by 松田まゆみ at 13:42│Comments(0)
│詩