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山の挽歌-松田白作品集- ›  › ブローチ

2009年03月26日

ブローチ

   ―友のブローチに寄す―

失われた私のブローチ
今日もこの秋雨に冷たく濡れていることだろう
からまつの落葉に交じって
悲しく湿っているに違いない
艶やかに 淡く白んで
例えば牛乳に卵黄を溶いたように
冷たい石だったが
とうとう 私の胸を離れて
お前は山に帰ってしまった
銀色の金具はもう錆びてしまったろう
去りし日に
お前の冷たさを感じ
私の温もりを与えた
それは今も私の指先に
懐かしく残っている
「哀惜(あいせき)」
青い空と黄金色の日光が
ピチピチはねていた日曜の午後
私のはずんだ心が つい見失ってしまったお前
都大路のショーウィンドから
何気なく私の胸に移されたお前だった
ブローチ
お前はよく私と一緒だった
公園の木の間もる月影を宿した宵
コンサートのハープにふるえていたお前
華やかな語らいの夕にも
お前は異教徒のように 私の胸に一人ぼっちだった
私の心よ
憂愁を湖に投げかけたある日
お前も夕映えの漣(さざなみ)に泣き崩れていた
私の友よ
ああ 永訣の夕
私の最愛の魂の天に召された夕
涙に曇った私の鏡にお前も共に潤んでいたね
山に秋草が枯れ 私の胸元に残った淋しさ
今こそ 私は愛することを知った
私は淋しさを喜びとすることを知ろう


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Posted by 松田まゆみ at 16:02│Comments(0)
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