山の挽歌-松田白作品集- › 詩 › 明暗
2009年04月15日
明暗
そのことを知ったのは
バスの中だった
登山の疲れかバスの酔いか
貴女は私の膝にうつ伏した
その時から私の心の中で
君は私の友達ではなくなった
最後部のシート
曲がりくねった道
私はゆれる君の頭を
そっと抑えた
あの時から私にとって
君は以前の君でなくなった
私の指先にふれた
君の唇 暖かい呼気
私の心は蒼ざめ
私の胸は波立った
私は求め抑えていたものが
何であったかをその時知った
いずれ知らねばならぬ
そのことを
たまさか窓をよぎる街灯のように
光が私の胸に明暗をつくった
苦しみ 喜び 苛立ち 期待
そのことを知った人の子の
やがて持たねばならぬ数々の文字が
私の心に深い明暗をつくった
Posted by 松田まゆみ at 09:53│Comments(0)
│詩