山の挽歌-松田白作品集- › 詩 › 愛の悲しみ
2009年06月11日
愛の悲しみ
鳥も啼かぬ白樺の森の
波立てぬ沼のほとり
梢から絶間なく
たゆたい下る霧雨の
二人をとりまき
二人を黙らせ
いつまでも濡れていたいと
思う心の
空虚な時間と
幸福な時間との
連続のはかなさ
貴女も知っている
私も知っている
愛することの苦しさを
その苦しさを逃れることの
できぬ掟を
逃れようとは思わない
逃れようとは思えない
石楠花の固い蕾に
梢より落ちる悲しみ
相寄る二つの魂に
悲しみの
ふりかかり ふりかかり
人を愛せし罪びとの
悲しみだけが美しいと
悲しみだけが美しいと……
Posted by 松田まゆみ at 15:23│Comments(0)
│詩